『赤』 リチャード・クリスチャン・マシスン

 『赤』 リチャード・クリスチャン・マシスン
 (『厭な物語 DISTURBING FICTION』文春文庫 所収)

―― 歩調があがり、息が重くなった。彼は必死に進んだ。

やりとげるのだという自分への誓いを反芻しながら。 ――

 この海外短編アンソロジーは、おもに三つの点で、私を痺れさせてくれた。

 一つには、不勉強な杉崎に「厭な物語」英語で言うと「DISTURBING FICTION」という言葉を教えてくれたこと。
 自分が書いてるのはホラー専門、などと公言しながら、どうも、まっとうなホラーとはどこか違う物を書き散らしている自覚もあって、そんな時この本と出逢い、私が書こうとしている作品の方向性とはまさにこれ、「厭な物語」だったんだ、と納得させられた。
 解説で千街晶之氏が挙げているジャック・ケッチャムの『隣の家の少女』、私、本当に大好きです。

 二つ目。このアンソロジーの一番最後の作品における仕掛け。ここまで巧みなアイデアにはなかなか出逢えない。
フレドリック・ブラウン作、という以外、何を書いてもネタバレになってしまうので、杉崎は口をつぐみます。
このブログでも、今後レビューすることは無いでしょう。

 そして三つ目、『赤』(原題『RED』)。日本語の文庫本で、わずかに3頁と4行。超短編。
 その短さにもかかわらず、というか、その短さゆえに、読み終えた後の、頭をぶん殴られたような驚きの鋭利さは私的年間ベスト級だった。真相のえげつなさもヘビー級なのだが、最初から最後まで語り口が一字一句すごい、としか言いようがない。初読の味は一度きりなので、これから読もうという方は、斜め読みせず、丁寧にゆっくり読み進めて下さい。

 幻想小説を思わせる謎に満ちた抽象的な前半、そして即座に種明かしで THE END となるという、短編や超短編の分野では珍しくない形式。しかしこういう風に、ぼやけたレンズの焦点がスッと合うように、驚くべき真相を読者に叩きつける流れの鮮やかさには、ただただ感心するばかり。
 なにより、受難者あるいは苦行者の宗教的物語であるかのような、前半の描写、この雰囲気作りがとても巧い。
 一生に一つでいいからこんな超短編を書けたらなあ、と思わざるを得ない、宝石のような、最高に厭な作品です。

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コメント: 2
  • #1

    sekstelefon (水曜日, 01 11月 2017 00:55)

    niezawilgocony

  • #2

    tutaj (土曜日, 04 11月 2017 01:55)

    bartoneloza