『残されていた文字』 井上雅彦
(『異形博覧会』井上雅彦 角川ホラー文庫、『四角い魔術師』井上雅彦 出版芸術社 所収)
―― もう焚火をすることもできない。火種が尽きてしまったのだ。食料もない。奈美の体もどんどん冷たくなっていく。 ――
井上雅彦氏の略歴の初めの方に、しばしば『よけいなものが』の名前を見る。
『四角い魔術師』の方では、巻頭一作目が『よけいなものが』、二作目が『残されていた文字』である。
どちらも素晴らしいアイデアの技巧的ホラーショートショートの逸品だが、杉崎は『残されていた文字』の方をより高く評価したい。
……と言うと偉そうだが、つまりこっちの方が好きだ、ということです。
タイトルの野暮ったさが唯一の欠点かなあ、どうでもいいことだけど。
なんか新青年傑作選とかに収録されてそうな古めかしいタイトルに思えて。
ショートショートとしても、かなり極限の短さ。
しかしちゃんと導入部があり、ちゃんと話が展開する。そしてあのラスト。
『よけいなものが』の読後感は「なるほど」という感じだが、『残されていた文字』は「うわっ、怖っ」である。ホラーの愉しみ、ど真ん中なのである。
より正確に言うと、杉崎は『よけいなものが』を初読の際は、じんわり怖いな、と感じた記憶がある。なるほど巧いな、は、二度目以降の感想かもしれない。
だが『残されていた文字』は、二度目でも三度目でも最後でぞわっとする。読めば分かる文章上の技巧に加え、結末に置かれた厭な話系のテイストが、厭な(つまり、好ましい)余韻となっているからだと思う。
でもまあ、何よりも、内容と不可分の関係にある、あの特殊文体の切迫感と不気味さ。
この作品のレビューを書くにあたって、公表し、ずっと残る文章だぞ、自嘲しろよ、と自分に言い聞かせるのであるが、それでも杉崎は、やっぱりアレをやってみたくなる衝動が抑えきれ
ないのである。…ああ、結局やっちまった。お許しください。
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sex telefon (火曜日, 31 10月 2017)
niezabejcowany
sek stel (水曜日, 01 11月 2017 01:50)
niepaplący