『それでもおまえは俺のハニー』 平山夢明

『それでもおまえは俺のハニー』 平山夢明
 (『異形コレクションⅩⅩⅩⅤ 闇電話』井上雅彦監修 光文社文庫、『ミサイルマン』平山夢明 光文社、光文社文庫 所収)

 ―― 「見て視えず、聞いて聴こえずってやつだな。その鳥の巣みたいな頭の中に誰かいないのか? ――

 これがホラーならば、谷崎のあの究極の恋愛小説もホラーなのか?ってことになるのだが…。
 (谷崎の作品名を書くとネタバレになるので書けません。あしからず。)
 まあでも、こっちはオカルト要素もあるし、いつもの平山バイオレンス小説であることも、間違いない。

 電話が暴力的な加害者となる、という点、初出が『闇電話』だからだってのもあるが、アイデアとして面白い。
 が、その程度のオリジナリティはありふれていて、やっぱり平山先生が書くから面白いってのは当然あるんだろう。
 こういう人工的なセリフを軽妙に転がし続ける能力って凄いなあと思う。
 それでいて油断してると、痛いシーンの描写力も高い。ウヒッ!って変な声が出そうになります。

 それにしてもこの作品の舞台設定は、なんとも素敵である。
 変にリアルな東京アンダーグラウンド系ではなく、最下層の日本と無法の西部劇を合わせたような、ありえない町。
 何もかも新奇で、何がおきてもおかしくない町。
 こんな舞台を使いこなせるなら、いくらでも魅力的な話書けるよなあ、と思ってたら、のちに長編『DINER』で結実します。