『箪笥』 半村良

『箪笥』 半村良
 (『炎の陰画』半村良 河出書房新社、『能登怪異譚』半村良 集英社文庫、他 所収)

 ―― あの箪笥の音や。
 市助は金縛りにあったように、身動きもできんやった。
 カタン、カタン、カタン、カタン。 ――


 ○○が××したら、怖いんじゃないかな……、と365日考え続けている、と言っても大袈裟ではない。
 そうしていると週に一度ほど、奇想のようなもの、変な状況のイメージが天から降ってくる。
 だが詰めて考えると、結局モノになりそうなのがそのうちで数本に一つあれば、良い方である。
 話の筋立てを細かく書いてみる、冒頭を書き始めてみる、そうすると、あれ?怖くねえじゃん、とトカトントン。
 このパターンがとても多い。

 『箪笥』。杉崎が今更どうこう言うこともない、傑作短編である。
  私はこの作品こそ、ただのアイデア作品だと言いたい。そして、なんと光に満ちたアイデアだろう。
 訛りまくったおばあちゃんの語りという文体選択や、主人公の当惑、家族の奇妙な雰囲気などの話作りの絶妙さもこの作品の力の源ではあるが、いくら文章力でこねくり回しても、元のアイデアのパワーってのはやっぱり作品の出来を決定的に左右する。

 そういうわけで、この作品は本当に怖い。
 私がこれまで読んだホラー短編すべての中でも屈指の怖さだと、今も言える。
 ″そこ″からは何が見えるのか、という想像ももちろん怖いのだが、それ以前に、状況自体が怖くて仕方がない。
 スプラッタもグロも憎悪も怨念も悪霊・妖怪も用いずに、静かに鮮烈で決定的な絵を提示する。
 異常心理話でもなければ民話的因縁話ですらない。
 強いて言えば、かなりピュアな部類の不条理ホラーだ。

 私も、いつかはこんな素晴らしい絵を書いてみたい。

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コメント: 2
  • #1

    seks telefony (火曜日, 31 10月 2017 21:47)

    okrąglutki

  • #2

    sextel (水曜日, 01 11月 2017 03:03)

    karygodniej