『枷(コード)』 平山夢明

『枷(コード)』 平山夢明
 (『異形コレクションⅩⅩⅩ 蒐集家(コレクター)』井上雅彦監修 光文社文庫、『ミサイルマン』平山夢明 光文社、光文社文庫 所収)

 ―― 彼女がなかなか【顕現】しなかったからである。あなたは焦り、怒り、そして破壊は酸鼻を極めた。 ――

 個人的な話だが、この作品を読んだの、自分の平山小説体験の中でもかなり初期に属する。
 というか、異形コレクションを読み始めた2、3冊目が『蒐集家』だったように思う。
 それまで鬼畜系文献にノータッチだったわけでもないが、率直な感想としては「ここまでしつこくグロ書くんだ…」と驚かされた。
 ゴム長手袋のシーンと軍手のシーンは特に、今読み直してもきっついなあ。

 そして本作の特徴は、二人称小説であること。主役は「あなた」。
 なぜこの作品に二人称を採用したのか、他の作品ではだめだったのか?と考えてみたりもしたが…
 この作品の主人公が超ハードに拷問し拷問されるアクティブなタイプなので、二人称が生きる、という計算なのかな。
 実際、読んでてかなり痛いです。

 それにしても二人称形式って面白い。
 夜遅く一人優雅に読書を楽しんでいたら、いきなり惨劇の当事者として指名されてしまうのだから、読者も大変である。