『死せるイサクを糧として』 牧野修
(『ファントム・ケーブル』 角川ホラー文庫 所収)
―― おまえの子孫は大いに増え、地上の民は全ておまえの子孫によって祝福を得るであろう。おまえが私の言葉に従ったからである。ま、ちょっとやりすぎたけどな ――
この作品については、ネタバレすれすれのところまで内容や構造に言及することは、いたしません。
(普段、不愉快な思いをさせていたならばお許しください。)
この作品については、ただ凄い凄いを言ってれば、紹介者としての役目を果たせる気がするので。
まず、冒頭で語られる不幸な事件、この衝撃度がまず、私の感覚だと牧野作品の中でも最強だ。
思わず、うええええええええ、って声が出ます。
こんな場面を、実際に書いていいのか?ってレベルである。
そして本作、牧野作品に多く見られる「悪意」テーマの短編なのだが、本作においては悪意の正体、本質について明言されていて、その説明の理屈も、展開の意外性も、非常に秀逸である。
もちろん、著者は研究者ではなくフィクション作家なので、他の作品では全く違う説明、理由づけがなされることもある。
本作で示された悪意の構造は、あくまでも解の一例みたいなものだ。例えば長編『スィート・リトル・ベイビー』では全く異なった(しつこいようだがフィクションの)別解が、用意されている。
読者は、冒頭で全身を凍りつかされ、心にぽっかり無防備な穴を開けたまま、非常に面白いストーリーを、ひたすらその穴にそそぎ注ぎ込まれる。
最後まで異常な緊迫感がバッチバチに維持されたまま、一気に読み切るしかない。
(あるいは2ページ目で本を投げ捨てるか、どちらかだ。)
シーンの衝撃度も、ストーリーも最高レベルだ。だから作品として最高レベルだ。
そんな単純明快な紹介で、今回だけはいいんじゃないかな、と。
少なくとも私の頭の中では、『おもひで女』とともに短編ホラーの最高位の一角に十年以上ずっと居座っている、そんな作品である。
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sex tel (金曜日, 03 11月 2017 21:13)
zaburczanych