2014年8月、kindleにて発表。
改行をいっぱい加えた以外、加筆はしていません。
この作品については、発表直後にすでにこのブログで自作自解を書いてました。
そちらもご覧ください。
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そちらにも書いたわけですが、杉崎の作品の中でも今のところ最も自伝的要素が強い作品の一つ。
実は、始めの方、半分ネタ感覚で、滅茶苦茶に重苦しい純文学文体で書き始めていた。
今草稿を見直してみたら、初めの四分の一ぐらいはそんな感じでガッツリ書いてある。
……しかし、こんなもん誰も読みたくないだろ、と我に返って、一年以上放置していた。
できるだけ軽快に、ライトに、文体を直しちゃった方がいいな、と2014年になって一から書き直し、完成にこぎ着ける。
読んでいただける方の苦痛軽減とか、売れ線の文体とは何か、とか考えなかったと言えば嘘になるが、でも根本的には、自分的に重すぎるテーマだから文体はできるだけ軽くしよう、とそういう単純な発想である。
ヒロインを登場させてガンガン動かしたのも、読み易くしたかったから、に他ならない。
杉崎にしては、珍しい試みである。
ちなみに、念のために書いておくが、「私個人的に重すぎるテーマ」とは女がらみ失恋がらみの話のことではないです。
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最初の着想としては、<都会に出ている「泥人形F」が久しぶりに泥人形の集落である故郷に帰る>という、ただそれだけ。
というか、もっと言えば「泥人形Fの帰郷」という謎の言葉が、突然天から降ってきたのだ。
そもそもFってなぜ「F」なのかも思い出せないし、多分意味はない。
フランケンシュタインの怪物のFなのかもしれない。
だが、書き進めているうちに、否応なくFが杉崎本人と重なり始める。
自分以外の者としてFを描けないのである。
なので、客観的描写に徹した奇想SFみたいな方向から話が逸れ始めた。
迷走ではなく、船のカジがジワジワと当初の目的と違う方向に逸れてゆく感じ。
そんなわけで、非常に個人的的要素が強い作品になるに任せた。
まあ、杉崎本人の人となりを相当詳しく知っている方以外には、どうでもいいことなのでしょうけれども。
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