満員

 

 

 夜半過ぎに目が覚める直前、私は通勤ラッシュの夢を見ていた。
 電車の車両に大勢の人間が詰め込まれている夢。直立する人、人、人。頭、頭、頭。
 よい夢のわけがない。魘(うな)されて、眠りが徐々に浅くなり、やがて意識の覚醒を自覚せざるを得なくなった。
 普段はあまりないことだった。

 私はベッドに横たわったままピクリとも動かず、ただ瞼だけを開き、そして息を呑んだ。
 私の寝室は満員だった。
 人ならぬ者で満員だった。
 白い、もやのような曖昧な人影が何十も、ひしめき合うように、ただ立っていた。

(2015年 1月)